産業保健師と産業医。
職場にいる医療系職種としてひとくくりにされがちな存在です。
さて、その違いを明確にご存じですか?
保健師の中でも、職域で活躍する「産業保健師」とは、いったいどんな人なのでしょうか?
保健師と産業医は有する資格が異なるため職務や責任の範囲が大きく違います。
産業医は、医師であり産業医である者です。
医学的知識をもとに、月に1回の職場巡視や健康診断結果、作業環境測定結果などから得た情報と組み合わせて、企業や労働者に対して助言や指導・勧告をおこないます。
一方の保健師は、看護師であり保健師である者です。
医学・看護学・保健学分野の知識をもとに、主に疾病の予防活動をおこないます。
保健師には、さらに産業保健師や行政保健師(地域保健師)という分類があります。
資格に違いはなく、簡単に言うと「活躍の場」によって呼び分けられているのです。
産業保健師は職場で活躍する予防の専門家。
ですから、労働者の心身の不調を予防するために健康管理や保健指導を行います。
そのために、労働者、企業、産業医の間で意見や情報の調整役・伝達役を担います。
左の資料は令和4年(2022年)の就業場所別にみた保健師の数です。
国内では約6万人の保健師が働いていて、その大部分は都道府県・市区町村・保健所といった行政機関で働く行政保健師(地域保健師)です。
これに対し、会社や工場などの事業所で働く保健師を「産業保健師」と呼びますが、その人数は4,000人ほど。保健師全体の7.0%と決して多くはありません。
↓↓令和4年(2022年)就業医療関係者の概況↓↓
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/dl/gaikyo.pdf
左の資料は、厚生労働省が作成した職業情報提供サイトJobtagから、保健師に必要なスキルを抜き出し、必要度の高い順に並べてみたものです。
ごらんの通り、いわゆるコミュニケーション力が具体的に求められていることがわかりますね。
対話の力(傾聴、他者の反応理解、読解)
伝える力(説明、文章)
他者との調整
このように、保健師は、相談者の悩みを聞き、悩みを言語化して相手に納得感を伴い伝える、コミュニケーションの技術が求められているのです。
一方で、Jobtagに産業医という職業は未登録でした(2024年11月末時点)。
ああ、なんという存在感の薄さ……
産業医は企業に対して助言・指導を行う立場であり、批判的思考や交渉、合理的意思決定、分析・評価の力が重要スキルと考えられます。
保健師ではこれらのスキルがあまり求められていないことからもわかるように、保健師と産業医に期待されている役割は大きく異なるのです。
↓↓職業情報提供サイトJobtag(厚労省)↓↓
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/160
私たちはこれまで、複数の産業保健師からこんなお悩みを相談されてきました。
同業者(産業保健師)の母数が少ない
職場に1人だけの「医療系専門家」として配置されることが多い
つまり、相談相手がいない!
職場内・企業内に保健師の教育体制が整っていない
どうやってスキルを向上すれば良いかわからない
そんなとき、「あなた方、産業保健師にはこんな専門性がある」と私たちはお伝えしてきました。
医学・医療・保健・福祉の知識
高いコミュニケーション力
出社頻度の少ない産業医との連携
予防重視・高効率な職場改善
産業保健師が専門性を発揮して、不調者発生予防に積極的に動けるように、保健師さんごとに異なる職場環境に合わせて、ヒアリングやアドバイスを中心とした支援を行っています。
今まさにお悩みの保健師さんも、産業保健専門職の使い方に悩んでいる人事担当の方も、ぜひご相談ください。