社員が腰痛を発症した。手首や肩を痛めた。
いつも運んでいた物は、危険な重さだったのだろうか?
重量制限を考えるとき、何を基準にしたら良いのだろう?
働く人にとって、最も身近な労作のひとつが「持ち上げ・運搬」です。
一次・二次・三次産業を問わず、どんな業種でも、モノを持ち運ぶ動作は代表的な作業と言ってよいでしょう。
そして、重量物を扱う作業中につきもののトラブルと言えば腰や手首を痛めるトラブルですが、ほかにもこんなトラブルが予想されます。
重量物の持ち上げ・運搬にまつわるトラブルの例
腰や手首を痛める(腰痛症、腱鞘炎など)
姿勢をくずして転倒・転落
疲労と急激な血圧上昇による疾病(心筋梗塞・狭心症、脳出血など)
重量物を落として破損
職場における持ち上げ・運搬作業の重量制限のうち、よく行われるのが、「持病で●●があるAさんは、主治医の意見を参考に【■■kg以内】にしよう」というように、事例ごとに決定していく流れです。
これであれば、どなたにも理解しやすいことでしょう。
しかし、事例ごとの決定プロセスでは、病気・障害をもつのにそれが職場内で明らかになっていない労働者は、トラブルが起きるまで重量制限がかからないという問題を内在することになります。
事後対処は必要不可欠ではありますが、重量物によるトラブル予防に力を入れることが、事業の安定に貢献する経営視点というものです。
したがって、「(健康な人であっても)■■kg以上の手持ち作業は禁止。上司は代わりの運搬方法を模索しなければならない」というように、職場の普遍的な重量制限ルールを定めることがおすすめです。
さて、それではこの持ち上げ・運搬作業について、上限となる重量をどうやって決めたら良いのでしょうか?
重量制限に関わる法令や指針にはこんなものがあります。
労働基準法
年少者労働基準規則
女性労働基準規則
職場における腰痛予防対策指針
2と3は、1の労働基準法から派生した、厚生労働省令です。
4は、厚生労働省が発出した、腰痛予防のための具体的な対策集です。
これらをよく見ていくと、労働者個人の属性(年齢などの条件)で細かく分岐しながら、最後は「体重の●%まで可」といった形で、扱える重量の上限が決定されるようになっています。
年齢
性別
妊娠の有無
体重
作業内容(断続作業・継続作業)
運用する上での問題は、「Aさんには労働基準法」、「Bさんには腰痛予防対策指針」というように、個人属性しだいで、参照すべきルールが異なってしまう点です。
これでは、法令に準拠した重量制限を設定するのが難しくなってしまいます。
このあたりの面倒くささをすっ飛ばして、個人の属性から制限重量を簡単に算出するようなツールがあったらなあ・・・・・・
というわけで、このたび当社では、労働者の条件(年齢、性別など)を入力することで、その人が持つことができる重量をひと目でわかるツールを作ってみました。
ツールは、Microsoft Excel形式のファイルとなっています。
ブラウザ上では動作しませんので、必ずダウンロードして使ってください。
このツールに、労働者の属性を入力すると、適用される法令と、制限重量がパッと表示されます。
[労働者の属性] 25歳、男性、体重60kg
腰痛指針が適用
24kgまで(努力義務)
[労働者の属性] 19歳、女性、体重45kg、妊娠中
女性労働基準規則が適用
10.8kgまで(努力義務)、かつ、断続作業で30kg以上・継続作業で20kg以上は禁止
努力義務、義務(禁止)といった表現が出力されます。
これらは法令遵守状況(違反状況)の参考にしてください。
※ 基本的に、本ツールの対象は、医師から重量制限の提案を受けていない労働者です。
医師から重量制限を課されている人の場合は、①法令と、②医師の言うものとで、より厳しいほうの重量制限を採用することをおすすめします。
ツールは、
① 下のリンクをクリック
② ブラウザ上で「ファイル」>「ダウンロード」>「Microsoft Excel (.xlsx)」を順にクリック
とすると、PC等にダウンロードできます。
ぜひ使い勝手をお試しください。
また、よろしければお問い合わせフォームからご感想をお聞かせください。